前婚時の子供がいたケース
Aさん(72歳女性)のご主人が死亡。2人の間に子供はいなかったが、ご主人には離婚暦があり、50年前に一児(Bさん)をもうけた後、離婚してAさんと再婚していた。
そのBさんとは50年間音信不通で、どこに住んでいるのか、生きているのかさえもわからない状況であったが、相続権は、唯一の子なので、Aさんと同様の2分の1となる。
Aさんの依頼は、「主人の遺産は、40年間の夫婦生活で地道に築いたものであり、渡したくない。Bさんを探して、その旨を伝えてほしい」というものであった。
そこで調査に当たったところ、Bさんは同じ県内に在住していることがわかり、会ってAさんの考えを伝えたが、Bさんも「50年間父親がいなかった寂しさを考えても、子供としての権利は主張する」と妥協することはなかった。
双方ともに直接会いたくはないとのことだったので、当職が仲介してお互いの考えを伝えることとなった。
その後、何度かBさんと会ってAさんの思いを伝えた結果、最終的には、居宅(マンション)は「Aさんの単独名義」に、預貯金(約1,000万円)は「Aさんが7割、Bさんが3割を取得する」という分割内容で落ち着いた。
未成年者の相続人がいたケース
Cさん(43歳女性)のご主人が死亡。相続人は、Cさんと子供2人だったが、子供は2人とも未成年者であったため、遺産分割協議を行うことはできなかった。
この場合、未成年者の相続人については、それぞれに家庭裁判所が許可した「特別代理人」を立てたうえで、その特別代理人が代わって遺産分割協議を行うこととなっている。
そこで、当職と別の行政書士が特別代理人に就任する旨を家庭裁判所に申し立て、無事許可となり、Cさんを交えた3人で遺産分割協議を行った。
海外在住の相続人がいたケース
Dさん(62歳男性)の母親が死亡。相続人は、DさんとDさんの兄弟・計4人だったが、そのうちの1人(Eさん)はドイツに在住していた。
遺産分割の内容そのものは、すでに全員が納得しているとのことだったが、ドイツには印鑑証明の制度がないため、遺産分割協議書に実印を押印することができない。
そこで、現地(ドイツ)の日本国総領事館に連絡し、実印押印に代わる「拇印」(指紋押捺)の押印および総領事館発行の「本人の署名・拇印押印の証明書」をもって、協議書を法的に有効なものとさせた。
夫が多額の借金を残して死亡したケース
Fさん(61歳女性)のご主人が死亡。ご主人は個人事業での多額の借金があり、相続すればその借金の返済義務が相続人に生じるため、第1順位の相続人(Fさん、子供2人)は、相続を放棄する(家庭裁判所での手続が必要)こととなった。
しかし、第1順位者が放棄すると、その返済義務は、次に第2順位者(親)、さらに第3順位者(兄弟姉妹)と移っていくことになる。その旨をFさんに話したところ、Fさんは「他の親族に迷惑はかけられない」との意向で、兄弟姉妹まで全員の放棄手続の依頼を受けることとなった。
ところが、ご主人には異母兄弟(3人、うち1人はすでに死亡)がいて、その兄弟とは普段の交流がないことはもとより、ご主人の死去さえも伝わっていない状況であった。
そこで、当職のほうから、異母兄弟2人、およびすでに亡くなっている異母兄弟の子3人全員に、まず手紙で死去された旨と、放棄の必要性を伝え、その後も手紙や電話連絡でやり取りした。
その結果、全員が放棄する意向で一致し、無事、法定期限(自分に相続権があることを知って3ヶ月以内)内に放棄手続が完了した。