遺産の分配は、どうすればよいですか?
法律で相続権を取得する人、および相続人間の遺産の配分は定められています。
ただ、相続権利者を勝手に変えることはできないのですが、遺産の配分は(遺言書がない限り)相続人の間で自由に変えることができます。
たとえば、誰かがすべて相続したり、家屋は妻、土地は長男、預金は次男とすることも自由です。
よって、法律の定めの通りにしない場合は、相続人間の話し合い(遺産分割協議)で決めなければならないのです。
協議がまとまったら、書面にまとめて、相続人(遺産をまったく取得しない人も)全員が記名、押印をしておきましょう。
これが「遺産分割協議書」といわれるものです。不動産の名義変更等の法的手続に使用する場合は、行政書士などの専門家に作成を依頼されたほうがもちろんよいのですが、とりあえずは自分たちでまとめておいて、後で依頼されてもよいでしょう。
相続手続に期限はありますか?
相続手続そのものに期限はありません。たとえば、数年前に亡くなった父親名義の家の相続登記(名義変更)を数年後に行うこともできます。
しかし、売却等は死者の名義のままではできませんし、「そのままにしていたら、その後母親も亡くなった」というようなことになると、“2段階の相続”となり、遺産分割協議書の文面も複雑になってきます。
やはり、放っておかれるのはよくありません。
なお、「相続放棄」をされる場合は、「自分が相続人であることを知ってから3ヵ月以内」に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。非常に短い期限となっていますので、気をつけましょう。
閉鎖された預貯金口座は、どうしたら使えるようになりますか?
よく「葬儀費用を故人の預金口座から出そうと思い、銀行の窓口で引き出そうとしたら、応じてもらえなかった」という話を聞きます。
それは法的にそうしないといけないからです。
原則としては、相続人を確定させるすべての戸籍謄本、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書(金融機関所定の用紙の場合が多いです)および印鑑証明書をそろえて金融機関に申請が必要です。
預貯金額が各金融機関の設定した額よりも少額の場合、相続人の中の代表者のみの押印等で済むこともあります。
自分が相続権利者であることが明らかであり、「自分の法定の権利の分だけ引き出してほしい」と頼んでも、応じてはもらえませんので、注意しましょう。
遺言書が見つかったが、どう扱えばよいですか?
自筆で書かれた遺言書の場合、家庭裁判所にて「検認手続」というものを受けなければ、相続手続に使用することはできません。
特に、封書などに封印されているときは、その検認手続において開封しなければならず、勝手に開封することはできませんので、注意してください。
この検認手続は、非常に時間と手間隙を要します。「必要書類を調達・作成 → 申立て → 検認完了」まで1ヵ月~2ヵ月程度かかると考えておきましょう。
公正証書による遺言書の場合は、そのような手続の必要はありません。(詳細は本サイトの「サービス内容」をご覧ください)
また、遺言執行人が指定されていることが多いので、その人に連絡しましょう。
相続税は、どれくらいかかりますか?
相続となると、相続税のことを心配される方が多いのですが、実は相続税が発生する案件というのは、ごくわずかにすぎません。
というのも、現時点では、法定相続人が1人でも、6,000万円以上の遺産(平成27年から3,600万円)でないと相続税は発生しないからです。
この最低基準額は、法定相続人の数が増えれば、1人あたり1,000万円(平成27年から600万円)加算されます。
もし、この最低基準額を遺産額が上回るようであれば、税理士等の専門家にご相談されるとよいでしょう。(当事務所から信頼のある税理士のご紹介もできます)
公証役場とはどんなところ? 公証人とは?
「公証役場」とは「各種の公正証書の作成」や「私文書の認証」を行う公的機関です。
具体的には公正証書による遺言書や離婚協議書、各種契約書の作成、会社の定款の認証等を行ってくれます。
そこで作成・認証された文書は「お上のお墨付き」ともいえる効力があります。人にお金を貸す際に、公正証書で金銭消費貸借契約書(いわゆる借用証書)を作成しておけば、後で返済してくれないときに裁判等をしなくても回収が可能です。
そして、それを行ってくれるのが公証役場内にいる「公証人」です。主に裁判官や検事等のOBの方がやっておられることが多く、「法律のプロ中のプロ」の方たちです。
場所は、法務局の近くにあることが多く、福岡地区なら、中央区舞鶴、博多駅前、筑紫野市二日市等にあります。
「裁判所のようなところ」と思っている人もおられるかもしれませんが、そうではありません。人や事件を裁いたりするわけではありませんので。
「一般市民の希望を法的にかなえる」ための手助けをしてくれるところです。必要なときはお気軽にご利用されたらいいかと思います。
ただし、公証人はお忙しい方ばかりで、そんなに時間をさいてくれるわけでは、ありません。
ご利用の際はいきなり行くのは避け、アポイントは必ず取っておくべきですし、ことをスムーズに進めるには、まずは行政書士なりに相談されることをお勧めします。
弁護士や司法書士、行政書士など、いろんな種類の専門職があるが、誰に何を頼めばいいですか?
どの職種でも対応はしてくれますが、費用のことを考えると、やはり弁護士は全体的に割高です。
相続人間で争いが生じていて、裁判が想定されるのであれば「弁護士」さんにご相談なされたほうがよいかと思います。
裁判まではお考えでなくても、家庭裁判所の調停程度の可能性がおありなら「司法書士」さんが適格でしょう。
相続人間の話し合いのみで済みそうな場合は、割と安価で対応してくれる当事務所のような「行政書士」がよいと思われます。
(ただし、費用は事務所による個別差がありますので、詳しくはお問い合わせください)
もちろん、弁護士さんや司法書士さんのお力を借りなければ進まないようなことが起こっても、信頼のある方のご紹介ができますから、まずは、費用が最も安く済む可能性が高い、行政書士にご相談されることをおすすめします。
子供がなく、親兄弟もみな亡くなっている場合の相続人は配偶者(妻もしくは夫)だけ?
もし、先に亡くなっているご兄弟にお子さんがいれば、つまり本人からみたら甥・姪がいらっしゃれば、その方も相続人となります。
この場合の法定相続割合は、配偶者が4分の3、残りの4分の1を甥・姪で分けることになります。しかし、遺産分割協議書に全員の記名・押印が必要なことに変わりはありません。
このケースは、相続人の人数が非常に多くなることがあります。たとえば、8人兄弟の末っ子の方の相続で、上の兄弟7人はすべて先に亡くなっていて、その7人に2人ずつお子さんがいれば、甥・姪たる相続人は14人となります。
当事務所で手がけた案件でも、相続人が20人以上となったケースが何件かありました。しかも、配偶者側の甥・姪とは疎遠であることも多いですから、遺産分割協議が難航したり、協議書に全員の押印がそろうまでに非常に時間を要したりします。
こういうケースの方は、ぜひ遺言書を作成されておくことをおすすめします。
死亡した人の「出生から死亡までの戸籍」とは、どういう意味で、なぜ必要なのですか?
戸籍はいろいろな要因で新たに編製されます。結婚して新たな戸籍を編製した場合はもちろん、他の市町村に転籍したときや、また法律の改正で作り変えられたりもします。
例を挙げますと、戦前生まれの男性の場合なら、以下のような5種類の戸籍となるパターンが多くみられます。
① 出生時 → 祖父の戸籍に入籍(戦前は家督制で、親子3代とも同じ戸籍)
② 戸主たる祖父の死亡時 → 父親へ家督相続がなされ、再編製
③ 結婚時 → 新たに自分の戸籍を編製したが、本籍はとりあえず父親の戸籍と同じ
④ 転籍時 → マイホームを構え、そこを本籍に
⑤ 法律改正で戸籍が電算化され、再編製(各自治体ごとに、平成11年頃から随時実施)
「出生から死亡まで」とは、この場合なら、上記①~⑤の戸籍をすべてそろえるということです。(呼び方は、③除籍、④原(はら)戸籍、⑤現在戸籍、といいます)
では次に、なぜ「そのすべてが必要なのか」ということについてです。
現在の戸籍(上記⑤)には、自分の結婚暦や自分の子供が誰かなどの遍歴がすべて記載してあると思っている人が多いのですが、実はそうではなく、「過去の戸籍の時代に除籍した人は記載されない」のです。
よって、④の時代に離婚していたり、子供が結婚して除籍になっていたら、⑤の戸籍には記載されません。ということは、その人の子供が誰かを確定させるには、①~⑤すべて(厳密には子供を作れるようになる10歳頃以降)が必要となります。
「子供が誰かなんて、調べるまでもなくわかりきっている」としても、客観的にそれを証明するには、すべての戸籍をそろえるしかないのです。
実際の案件でも、離婚歴がある亡くなった夫から「前婚時代に子供はいなかった」と聞いていたのに、調べたら実は子供がいた、ということもありました。
すべてをもれなく(わずかな期間でも、空白期間があってはいけません)そろえるのは、なかなか大変ですが、ご自分でそろえるという方でも、遠慮なくご相談ください。